「アナトリアの伝説」 第45回

今日は、アナトリアの多くの地域で語り継がれるとある物語をお伝えします。

「アナトリアの伝説」 第45回

エーゲ地方の険しい山々の草原に、羊飼いの青年が暮らしていました。青年はしばしば、水が少なくなる季節に羊たちを高原に連れて行っていました。

高原で羊を放牧していたある夜、羊たちが眠っていたとき、数人の泥棒が襲い掛かりました。羊飼いの青年を捕えて手を縛った泥棒は、羊の群れを連れ去ろうとしました。しかし、羊たちはどうしてもその場から動こうとしませんでした。羊飼いは、葦でできた笛の音で羊を誘導し、葦笛が鳴らなければ羊は微塵も動かないと言いました。泥棒は羊飼いの手をほどきました。葦笛を手に取った羊飼いは、心地よい音楽を奏で始めました。羊の群れは羊飼いが奏でる歌に合わせて動き始めました。

このとき、近くにいた草原の長の娘がテントから出てきて、羊飼いの奏でる音楽に何か特別なものがあることに気が付きました。そして、遊牧民たちを集め、困ったことがあると言いました。武器を持った一団が羊の群れに近づきました。そして少しの間戦いが起こり、一団は泥棒を捕え、羊の群れを救い出しました。

遊牧民の長は羊飼いを呼び、話をしました。長は、娘が羊飼いと葦笛の音楽を通じて仲良くなったのではと疑いました。長は、自分の質問をごまかした若い2人が恋に落ちたことを見抜きました。しかし、一介の長の娘と貧しい羊飼いの結婚は、当時は無理なことでした。「太鼓でさえ自分にふさわしいものを選ぶ」というトルコ語のことわざがあります。長は、「もしそなたの言うように葦笛で羊の群れを動かすことができるというのなら、そなたに機会を与えよう。羊に3日間塩をなめさせ、水を与えず、それから川に連れて行く。そなたが葦笛を吹いて羊たちが水を飲むのを止めて川から上がってきたら、娘はそなたのものだ。」と言いました。羊飼いの青年は恋人と結婚できるよう、この試練を受け入れました。

青年は遊牧民みんなが見守る中、3日間羊たちに塩をなめさせ、水を与えませんでした。そして葦笛を吹いて羊たちを川に連れて行きました。青年は黒い羊だけが心配でした。黒い羊は他の羊よりももっと気難しく、言うことを聞きません。青年は水辺にやって来ると、葦笛を吹いて羊たちに水を飲むのをうまく止めさせました。黒い羊は青年と川を交互に見ました。そして川に向かって歩き始めました。青年が吹く葦笛は、まるで黒い羊に懇願するかのような響きを奏でました。青年は涙を流しながら葦笛を吹きました。黒い羊は川辺にやって来ると、一瞬立ち止まりました。そしてもう一度青年の方を見て、群れに戻ってきました。しかし、黒い羊の子どもは喉の渇きに耐えられず、そこで死んでしまいました。

これを見た人々は驚きに包まれました。草原の長は約束通り、娘と羊飼いの青年を結婚させました。2人は幸せに包まれました。


キーワード: アナトリアの伝説

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