「トルコ・ユーラシア協議事項」 第52回

トルコのレジェプ・ターイプ・エルドアン大統領が、数週間前にギリシャを公式訪問しました。私たちも今回、エルドアン大統領のギリシャ訪問と、訪問を通じて国際世論の議題となった西トラキア地方のトルコ人について分析します。

「トルコ・ユーラシア協議事項」 第52回

エルドアン大統領は、トルコ・ギリシャ関係で新たなページを開くために、数週間前にギリシャを公式訪問しました。この訪問は、1952年以来トルコの閣僚級の初の訪問となりました。ギリシャでは、二者会談を行ったほか、西トラキア地方のトルコ人とも一同に介しました。そのため、西トラキア地方のトルコ人と彼らが抱えている問題が、国際世論の議題となりました。

西トラキア地方は、地理としてはギリシャのギュミュルジネ県(コモティニ)、イスケチェ県(クサンティ)、デデアーチ県(アレクサンドロポリス)を含みます。現在、西トラキア地方には15万人以上のムスリム・トルコ人の少数派が暮らしています。1923年のローザンヌ条約により、西トラキア地方のトルコ人社会は「少数民族」の地位にいます。しかし、トルコ人は少数派としての大半の分野の権利を利用できていません。ギリシャのトルコ人への抑圧的な政策が原因で、1920年代には西トラキア地方の人口の65パーセントを占めていたトルコ人の今日の人口は30パーセントに後退しました。また、1923年に約84パーセントだった西トラキア地方のトルコ人の土地所有率は、今日では25パーセントに後退しました。

西トラキア地方のトルコ人が少数派の権利を利用できないでいる問題において、ギリシャ政府によるトルコ人の権利適用が1960年代以降後退しているのが見られます。トルコ人は1967年以降ワクフ(宗教的財団)の管理から遠ざけられました、1970年代以降、「トルコ人」という名称の使用が罪とされました。1980年代には名前に「トルコ」という言葉がある少数派の市民社会団体は、違法だとされました。1990年代にはムフティ(宗教行事実行者)の選挙に関し、1920年の法律が撤廃され、そうして公布された共和国法令により「任命されたムフティ」の適用が開始されました。このような後ろ向きな動きはまだ何十とあります。

ギリシャ政府は、「少数派トルコ人」という表現はローザンヌ条約にはないと主張しています。少数派の民族的アイデンティティを定義する権利を認めていないのです。ローザンヌ条約の「少数派の保護」という題の条項には、「ムスリム」という言葉が使われていますが、同条約の他の規定にある「トルコ人」の表現と会議記録の公布から、住民交換の範疇から外された西トラキア地方の少数派がトルコ人であることは、はっきりしています。また、「トルコ人とギリシャ人の住民交換に関しトルコ・ギリシャ間で締結された条約と議定書」や住民交換の対象とならなかった人々に付与される「段階的」文書には、「トルコ人」「ギリシャ人」の言葉が使われています。

今日、西トラキア地方のトルコ人は、教育分野、言語の自由、ワクフに関する事柄、政治的代表レベルの事柄をはじめ、多くの領域で深刻な問題に直面しています。ギリシャは、ローザンヌ条約で少数派トルコ人に認められた権利を一切適用していないのと同様に、西トラキア地方のトルコ人に、経済、社会、政治、文化面においてとても大きな圧力をかけています。トルコ人のアイデンティティとトルコ語を、ほぼ全く無視するギリシャは、経済的圧力もかけています。

筆者は西トラキア地方の少数派トルコ人の主だった人物と、先日、電話とインターネットを通じて様々な話をしました。少数派トルコ人の最大の悩みは、経済的圧力をかけられていることと、教育におけるダブルスタンダードです。筆者が話をした少数派トルコ人の人物は、トルコ人には仕事が与えられておらず、大半がタバコの栽培に従事しており、そのタバコには国の平均以下の値段が付けられていると語りました。教育は、特に圧力が厳しく、そのため子どもたちがギリシャ語とトルコ語の習得において困難な目に遭っていると強調しました。トルコからの教師の派遣にギリシャ政府が圧力をかけていると語りました。ギリシャ語の教育もわざと質の低い教育が与えられていると強調しました。このような状態では若者の大学進学や就職の道が絶たれてしまうのは確実です。

トルコは、西トラキア地方のトルコ人が、ローザンヌ条約、欧州連合(EU)の権利獲得、普遍的な人権の認識に合う形であらゆる機会が利用できるようになることを望んでいます。トルコはこの枠内で、欧州人権裁判所の決議の適用を望んでいます。なぜならトルコはこの考えにより、トルコにいる少数派ギリシャ系国民の要望に、彼らとの対話の中で応えるためにここ数年非常に重要な歩みを踏み出したからです。そのため、トルコのような取り組みをギリシャにも期待することは極めて当然のことです。西トラキア地方のトルコ人は、良いギリシャ国民としてギリシャのために働いています。その見返りに、ローザンヌ条約の規定とEUの基準に合った振舞いを期待することは、最も自然な権利です。

エルドアン大統領の訪問は、二国関係の修復と友好をもう一歩先に進めるための歴史的な機会となりました。このような訪問が実現したことは、両者ともにこの方向における意思と期待を抱いていることを示しています。しかし、一方で、二国家間には多くの未解決問題があります。その大部分が、慢性的な問題です。その例はキプロス問題、エーゲ海の領土問題、領空、領海についての意見の食い違いなどです。この訪問が、その意見の食い違いの解決に関して具体的な結果を出すことは、おそらくないでしょう。訪問から期待される基本の結果は、相互への良い意図と信頼を築くことです。65年を経て行われたこの公式訪問は、その実現にとって歴史的なチャンスです。トルコとギリシャの二国関係の発展は、少数派問題の解決も容易にするでしょう。これらの問題の解決は、トルコとギリシャをお互いにさらに近づけるものです。

アタテュルク大学国際関係学部ジェミル・ドアチ・イペク博士の見解をお伝えしました。



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