「世界の視点」 第40回

「正義の域」

「世界の視点」 第40回

アンカラ・ユルドゥルム・ベヤジット大学政治学部クドレト・ビュルビュル学長著

 

先週、第73回国連総会で世界の首脳が一同に会しました。アメリカのトランプ大統領がグローバル化に反対すると表明したこと、フランスのマクロン大統領がトランプ大統領への実質的な回答として国際協力活動を弁護したこと、トルコのレジェプ・ターイプ・エルドアン大統領が「世界は五大国より大きい」と強調して正義を呼びかけたこと、ニュージーランドのアーダーン首相が生後3か月の赤ん坊を連れて総会に出席したことが、首脳会議において人々の記憶に残ったことでした。

このプログラムでは、首脳会議の主要な事柄ではなく、エルドアン大統領の正義の呼びかけについて触れたいと思います。エルドアン大統領は、かつてのトルコ・イスラムの伝統または概念である「正義の域」を振り返りつつ、世界レベルの水準で正義が不足していることに注意を促しました。

「我々の文明には、『正義の域』と呼ばれる社会、法、政府、国家権力、経済、正義の間の関係の最も公正な構築を土台にした区域がある。どれもが相互に関係するこの区域の繋がりは、今日の世界の多くの場所でばらばらになっている。今日の世界が政治・社会・経済的不安定の中でもがいている理由はこのことによる。我々皆が安心して信頼できる未来のために、人間性の正義の模索とともに始まっている戦いを、正義の構築により終わらせることが可能でなければならない。今日、世界で最も裕福な62人の資産が、世界人口のおよそ半分、つまり36億人の人々に相当しているのであれば、そこには問題があるということだ」

エルドアン大統領が正義を強調したことをより良く理解するために、まず近い過去に欧米に存在した普遍的な価値感に関する出来事を見る必要があります。第二次世界大戦の後に人権、自由、平等などの概念が頂点に達した欧米は、今日はこの価値感から急速に遠ざかっています。欧米諸国で移民やムスリムに対する不公平はもはや日常と化しています。差別主義政党が支持率を高め、連立政権として政権を共有していることで、外国人に対するヘイトスピーチはもはや問題視されていません。一部の欧米諸国では反移民の姿勢を取る政党が与党になっています。欧州連合(EU)諸国は、難民を国境の安全のみの視点から見ており、その目的のために軍隊を編成しています。難民がその居住していた国で死亡するか、トルコのような人間性の良心が存在している国々にいれば、欧米にとってあたかも何らの問題もないようなものです。今日、普遍的な人間性の価値感が欧米に対して一層擁護されるべき世界に私たちはいるのです。

トルコの視点から見ると、宗教、文明、歴史のどれにおいても最も基本的な価値感と概念は正義です。先ず何よりも正義が大事であり、自由、平等はそれに含まれるものです。何世紀にもわたり私たちの道標となり、今日トルコのどの裁判所でも書面として記録されている「正義は財産の基本である」との文言における財産とは、資産や所有物のみの意味ではなく、秩序や国家といった意味も有しています。正義の必要性は、トルコの伝統において「正義の域」のビジョンと実施によって制度化されています。「正義の域」は、正義とともに始まり正義とともに終わる政治・社会・軍事・財政・商業・経済的な秩序が制度化されたものです。

ユスフ・ハス・ハジブが1069年にクタドゥグ・ビリグで、クナルザーデ・アリ・エフェンディが1564年に記したアフラキ・アライやトルコ・イスラム伝統の多くの重要な書物で、正義の域についての叙述があります。トルコの伝統において、あらゆるものの基本は正義であり、正義が築かれていない状況においては国家も財産も存在し得ず、人々も幸福になれないという信条、見解、取り組みが、正義の域と呼ばれています。正義の域において、世界と国の秩序は正義とともに始まり、正義とともに終わる輪に例えられます。世界の平安と国家の秩序をもたらすものは、第一の輪における正義です。第二の輪において、世界は、壁が国家である庭に例えられます。第三の輪では、国家を編成するのは法です。第四の輪では統治者なくして法は守られ得ないということが述べられています。第五の輪では軍なくして統治者は国家を持つことができないということが記されています。次の輪では、所有物・税なくして軍は編成され得ず、所有物を集めるものは人々であると説かれています。最後の輪では、最初と同様、再び正義に重きが置かれています。なぜなら、税を支払うことができるために一定の収入を得なければならない人々を、政府に従わせるのは正義だからです。シェイフ・エデバリによる「人々を生かしてこそ、国家は生きる」という言葉は、人・正義・国家の関係の根本のようなものです。

今日、世界秩序が深刻に問いただされているのであれば、エルドアン大統領が頻繁に強調しているように、国連が緊急改革を必要としているのであれば、何らの責任も持たない無実の人々が、その目の前で道が閉ざされているために大陸から大陸に移っているのであれば、この秩序はこのように続くことはできません。解決策がないために死ななければならない赤ん坊の罪は何だったのかと問われれば、その答えは人間性と私たち全員にとって重々しい恥ではないでしょうか?エルドアン大統領が正義の域を強調したことは、一体化した世界に存在する弾圧に押し潰されないよう、欧米をも救うことを目指す呼びかけです。なぜなら、大セルジューク朝の大臣・ニザームルムルクが1000年前に指摘しているように、「罵りでは可能かもしれずとも、弾圧によっては人々を従わせることはできない」というものだからです。


キーワード: 世界の視点

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